薬物治療をすすめるうえで必ず考慮しなければいけないことに腎機能があります。
腎機能にはクレアチニンクリアランス(CCr)、糸球体濾過量(eGFR)、シスタチンCなど様々な指標がありますが、今回はeGFRについて考えてみたいと思います。
eGFRとは?
GFR(糸球体濾過量)は「1分間当たりに糸球体で濾過される液量」で、血液をきれいにする能力=腎機能の指標です。
※e=(estimate:推定)
健常人の場合、腎臓に流入した血液(1500L/日)は、糸球体で濾過され150L/日の原尿になります。
つまり、健常人では「糸球体濾過量が150L/日≒GFRが100mL/min」ですね!
標準化,個別化eGFRの違い
標準化eGFR(mL/min/1.73m2):体表面積で補正したeGFR
→腎不全の重症度分類に用いる
個別化eGFR(mL/min):未補正のeGFR
→薬剤の投与設計に用いる
それぞれについて詳しく見ていきましょう!
標準化eGFRとは
eGFRは1分間当たりの血液濾過量であるため、体型によって差が出ます。
(体が大きいほどeGFRが大きい)
個人間の体型に差があるとeGFRが小さいとき、腎臓が悪いのか・体が小さいのかの判断がつきません。
標準的な体型(170cm,63kg 体表面積1.73m2)であると仮定して補正する標準化eGFRを用いれば、全員を同じ体型に統一できるため、純粋な腎臓の状態を比較することができます。
そのため、腎不全の重症度分類では標準化eGFR(mL/min/1.73m2)を用います。
個別化eGFRとは
薬物投与量を決定する場合、本当の腎機能を考えなければならないため、本来と異なる体型に補正した標準化eGFRは使用できません。
例を挙げてみましょう。
50才 男性
クレアチニン 1.0mg/dL 標準化eGFR 63.1(mL/min/1.73m2)
①170cm,63kg(体表面積1.73m2)のとき
→ eGFR 63.1(mL/min)
②180cm,100kg(体表面積2.2m2)のとき
1.73 (m2):63.1 (mL/min)=2.2(m2):X (mL/min)
→ eGFR 80.1(mL/min)
③160cm,50kg(体表面積1.5m2)のとき
1.73 (m2):63.1 (mL/min)=1.5(m2):X (mL/min)
→ eGFR 54.8(mL/min)
上に示したように、投与設計の際に標準化eGFRを使用してしまうと、体型によっては大きなギャップが生じてしまいます。
そのため、薬剤投与設計では個別化eGFR(mL/min)を用います。
計算したい場合
体重、年齢、血清クレアチニンなどの情報を入力することで、腎臓病薬物療法学会のHPから簡単にeGFR・CCrを計算することができますので、ぜひ使用してみてください!
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