透析患者の血糖の指標にグリコアルブミンを使うのはなぜ?

糖尿病

日本での血液透析患者は年々増加しており、いまや約35万人です。

そして、透析導入の原因は1998年以降、糖尿病性腎症が1位です。
透析患者の多くは糖尿病の治療を受けており、透析患者での血糖コントロールは重要です。

そんな血液透析患者ですが、血糖コントロールの指標としてHbA1cではなくグリコアルブミン(GA)の使用が推奨されています!(血液透析患者の糖尿病治療ガイド2012.透析会誌. 2013; 46(3): 311-57.

結論から言うと、透析患者では腎性貧血のためにHbA1cでの安定した血糖管理が難しいため、GAを使用しています。

今回は、その理由について解説します!

血糖コントロールの指標

一般的に、血糖コントロールには以下の指標を使います。

ヘモグロビンA1c(HbA1c):過去約1~2ヶ月の血糖値を反映
グリコアルブミン(GA):過去約2週間の血糖値を反映
1,5-アンヒドロ-D-グルシトール(1,5-AG):一過性の血糖上昇を反映
血糖値:採血時の血糖を反映

GAは、HbA1cと血糖の中期的な血糖コントロール指標なんですね!

グリコアルブミンと HbA1c の違いは?

グルコースはタンパク質と非酵素的に結合し、糖タンパクとなります。
糖タンパクのうち、ヘモグロビンと結合したものがHbA1c、アルブミンと結合したものがGAです。

1度結合した糖タンパクは容易に分離できないため、HbA1cは赤血球の寿命である約120日(1~2ヶ月)GAはアルブミンの半減期である約17日(2週間)の血糖を反映します

また血糖の動きに対して、GAはHbA1cより大きく、速く動く性質があります。
それには以下の理由が考えられています。
・グルコースの結合部位がGA>HbA1c
・グルコースとの反応性がアルブミン>ヘモグロビン(GAの増加率はHbA1cの4.5倍)

なぜ透析患者でHbA1cが使いにくいのか?

赤血球寿命の短縮

透析患者は、尿毒素の貯留、動脈硬化、透析による出血など多くの要因により、赤血球寿命が大きく短縮します(約60日)。

赤血球寿命の短縮によって、HbA1c値や、反映する期間がぶれる可能性があります。

ESAの使用

腎機能が低下している場合、腎臓で産生されるエリスロポエチンが低下し、腎性貧血を起こします。
治療には赤血球造血刺激因子製剤(erythropoiesis stimulating agent:ESA)を使用します。

ESA投与により幼若赤血球の割合が増え、HbA1c は低値になる傾向があります。

これらの要因により透析患者では、HbA1cを過小評価する可能性があるため、赤血球寿命に依存しないGAを使用します。

血糖目標

日本透析医学会から暫定的の血糖目標値が提案されています。

随時血糖値180-200 mg/dL未満、GA値20%未満
心血管イベントの既往歴を有し、低血糖傾向のある場合はGA値24%未満

GAは1ヶ月に1回測定することが推奨されています。

また、非糖尿病の透析患者においても、2型糖尿病のスクリーニングとして、1年に1回、透析前血糖値およびGAを測定することが推奨されています。

まとめ

HbA1c 赤血球寿命やESA投与によって数値が変動するため、透析患者で使いにくい

GA 透析患者でも安定して使える

いかがでしたか?
2018年の透析学会統計調査委員会のデータによるとGAの使用患者数は76%、HbA1cの使用患者数は44%といわれており(うちGA、HbA1cを両方使用している者は20%)、全例でGAの評価をしているわけではありません。
透析患者でHbA1cを評価する場合は、低値である可能性や、過去1~2か月よりも短い期間を示している可能性も考慮しておくことが必要かもしれません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました