2020年5月、富士薬品(製造販売)と持田製薬(販売)からユリス錠が発売されました。
「なにがすごいの?なにが新しいの?」と疑問に感じたので、特徴を簡単にまとめてみました!
基本情報
商品名 | ユリス錠0.5mg/1mg/2mg |
一般名 | ドチヌラド |
作用機序 | URAT1選択的阻害(尿酸の尿中排泄促進) |
適応症 | 痛風、高尿酸血症 |
用法用量 | 1回0.5mgを1日1回から開始 維持量2mg、最大用量4mg |
規格・薬価 | 0.5mg:30.00円 1mg:54.80円 2mg:100.20円 |
高尿酸血症の病型
尿酸の再吸収、分泌に次のトランスポーターが関与します。
また、尿酸は腎臓だけでなく腸管(糞中へ排泄)からもABCG2を介して分泌されます。
高尿酸血症の病型は従来、以下に分類されていました。 ※()は日本人での割合
①尿酸排泄低下型(約60%)
②尿酸産生過剰型(約12%)
③両方の混合型(約25%)
しかし近年、腎外排泄低下型(ABCG2の機能低下で糞中に排出できない)の存在がわかってきました。
ABCG2について
ABCG2の機能が低下しているほど痛風発症のリスクは高いことが分かっており、機能が3/4に低下するとリスクは3倍になるという報告があります。
また、他人種と比較して、日本人ではABGC2の推定機能が低下している割合が高いこともわかっています。
日本人では特に、腎外排泄低下型に注意が必要そうですね!
ユリノーム、ベネシッドとの比較!
ここでユリスとユリノーム(ベンズブロマロン)、ベネシッド(プロベネシド)を比較してみます。
作用機序
この図は、ABCG2を基準としたIC50の比を表しています。
この数値が大きいほど阻害しにくいことになります。
ユリスは他と比べてURAT1に選択的に作用しています。
分泌は阻害せず、再吸収だけ阻害するわけですね!
また、ABCG2を阻害しにくいため、他2剤よりも腎外排泄低下型への悪い影響は小さそうです。
禁忌・副作用
添付文書記載の禁忌を一覧にしました。比較してみましょう。
ユリス | ユリノーム | プロベネシド |
過敏症の既往歴 | 肝障害 腎結石を伴う患者 高度の腎機能障害 妊婦 過敏症の既往歴 | 腎臓結石症 高度の腎障害 血液障害のある患者 過敏症の既往歴 2歳未満の乳幼児 |
肝障害
ユリスは肝障害の少ない薬剤をコンセプトに創薬されています。
劇症肝炎の警告があるユリノームと比べると肝毒性はマイルドそうです(当然注意は必要です)。
腎障害
ユリスは重度の腎機能障害患者(eGFRが30mL/min/1.73m2未満)で他剤での治療を考慮することと記載されています。
尿酸の尿中排泄を促進するため、尿量が減少していたり、無尿だと効果は期待しにくそうです。
重度の腎不全なら素直にアロプリノールやフェブキソスタットを選択する方がよいかもしれません。
妊婦
妊婦に対して、ユリスは有益性投与となっています。
しかし、「動物実験(ラット及びウサギ)で、臨床曝露量の約1053倍及び約174倍に相当する用量で骨格変異が認められた。」と記載があるため、手放しで奨めやすくはなさそうです。
腎・尿路結石
ユリスは禁忌ではありませんが、既往があれば注意したいところです。
尿酸排泄を促進すると、尿は酸性化されるため結石のリスクが大きくなります。
特に投与初期に尿酸排泄量が増大するため、開始時に電解質異常を起こさない程度に、水分をしっかりとるよう指導するとよさそうです。
相互作用
ユリノームはCYP2C9を阻害するためワーファリンが併用注意となっています。
対してユリスは、CYP2C9の阻害作用はないわけではないですが主な代謝経路はグルクロン酸抱合、硫酸抱合となっており、2C9関連の併用注意の記載はありません。
まとめ
ユリスのみどころは次の2点かなと思います。
①ユリスはURAT1に選択的なため、従来の薬剤より効率よく尿酸を排泄できる
②相互作用や副作用(肝毒性など)が緩和されている
臨床試験でフェブキソスタット、ベンズブロマロンとの非劣勢も示されており、それなりに効果も期待できそうです。
使いやすい尿酸排泄促進薬は、これから活躍する場面もありそうなので今後の臨床研究にも注目してみたいですね!
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