2019年11月、小野薬品工業からコララン錠が発売されました。
コラランはHCNチャネル遮断薬という新規作用機序です。これから活躍しそうなので、ぜひ押さえておきたいですよね・・・
そこでコラランの特徴についてまとめてみたので、一緒に勉強していきましょう!
基本情報
商品名 | コララン錠2.5mg/5mg/7.5mg |
一般名 | イバブラジン塩酸塩 |
作用機序 | HCNチャネル遮断 |
適応症 | 洞調律かつ投与開始時の安静時心拍数が75回/分以上の慢性心不全 ただし、β遮断薬を含む慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る |
用法用量 | 1回2.5mgを1日2回食後経口投与から開始 必要に応じ、2週間以上の間隔で段階的に用量を増減 1回量は2.5, 5 ,7.5mgのいずれかとし、どの投与量でも、1日2回食後投与 |
規格・薬価 | 2.5mg:82.90円 (165.8円/日) 5mg:145.40円 (290.8円/日) 7.5mg:201.90円 (403.80円/日) |
それでは詳しく見ていきましょう!
作用機序~HCNチャネル遮断薬とは?~
コラランは一言で言えば、血圧は下げずに、心拍数だけ下げる薬です。
添付文書的に言えば「洞結節のペースメーカー電流Ifを構成するHCN4 チャネルを阻害し、活動電位の拡張期脱分極相における立ち上がり時間を遅延させ、心拍数を減少させる」です。
洞結節の働き
洞結節は、心筋を収縮させるためのペースメーカー電流を作り出す部分です。
この電気信号は心拍数とリンクしており、洞結節のペースメーカー電流(約60~100回/分)がそのまま心拍数になるわけです。
洞結節の興奮が刺激伝導系のトリガーとなり、心筋が収縮します。
洞結節には自動能(自発的に興奮する性質)があるため、心臓はたえず動き続けてくれます。
洞結節の活動電位
HCN(環状ヌクレオチド依存性)チャネルは洞結節に存在するチャネルです。
HCNチャネルにNa+などが流入することで、ペースメーカー電流(If)が発生します。
これにより、第4相と呼ばれる緩やかな脱分極が引き起こされます。
コラランはHCNチャネルを阻害することで、ペースメーカー電流(If)の発生を抑制します。
これにより、脱分極の立ち上がりが遅くなり興奮の頻度が低下する=心拍数が低下します。
血圧が下がらないというのがポイントですね!
適応症
洞調律かつ投与開始時の安静時心拍数が75回/分以上の慢性心不全
添付文書より
ただし、β遮断薬を含む慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る
活動電位を抑制する薬ですので慎重に使用する必要がありそうです。
そういう意味でも不整脈や徐脈の患者には使用しにくいですね。
必ずしもβ遮断薬を使用しないと使えないことはありませんが、以下の条件が必要なようです。
・β遮断薬の最大忍容量が投与されても安静時心拍数が75回/分以上の患者
・β遮断薬に対する忍容性がない、禁忌である等、β遮断薬が使用できない患者
用法用量
消失半減期は2.58hr(2.5mg)、1.89時間(5mg)及び2.07時間(10mg)であり1日2回投与です。
増量する場合は2週間以上あけることに注意が必要です。
また、肝代謝であり、腎機能低下時の減量は不要です。
相互作用
コラランはCYP3Aで代謝されるため、CYP3A阻害薬は併用に注意が必要です。
併用禁忌
リトナビル、ジョサマイシン、イトラコナゾール、クラリスロマイシン
コビシスタット含有製剤、ボリコナゾール
エンシトレルビルフマル酸(ゾコーバ)、ベラパミル、ジルチアゼム
病態的にもベラパミル、ジルチアゼムは併用の可能性が高そうなので特に注意が必要ですね!
併用注意
CYP3A阻害剤、誘導剤、QT延長作用のある薬剤、ループ利尿薬、チアジド系、グレープフルーツジュース、ペースメーカー
初回指導時にグレープフルーツジュースについて注意喚起をするとよさそうですね。
ペースメーカーはバックアップレートが60回/分超に設定された場合、目標の安静時心拍数を得られないという理由のようです。
まとめ
心不全治療で心拍数を下げたいけれど血圧を下げたくない、という状況はよくあるように思われます。コラランはそういった場合にピンポイントで刺さるので、需要がありそうです。
過度な徐脈や、併用薬との相互作用など注意が必要な部分はあるので慎重に使用したいところです。
ここ数年で心不全の治療は、新薬の登場やSGLT2阻害薬の適応拡大もあり、過渡期に突入しているため継続的に情報のアップデートをしていきたいですね!
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